小春日和

「小春日和」ということばがあります。春という字が入っていますが、実は晩秋から初冬にかけて、ふと訪れる、春のように暖かく穏やかな晴れの日のことをいいます。
その日の園庭も、そんなぽかぽかとした日差しに包まれて、金木犀の甘い香りがただよっていました。金木犀は、秋の季語です。花よりも先に、まず匂いで秋が来たことを知らせてくれる木ですね。毎年、この匂いがすると、少し冷たい秋の空気を胸いっぱいに吸い込みたくなります。
子どもたちが遊ぶ園庭で深呼吸をしていると、「見て〜」と、小さな手が差し出されました。手のひらには、金木犀の花が三つ。香りのもとを見つけて、自分で摘んできたのでしょう。開いた手のひらの真ん中に、大事そうに載っていました。
しばらくすると、また「見て〜」。
今度は握りこぶしです。

何を握っているのかと思ったら、その指の上を、ダンゴムシが一匹、そろそろと歩いていました。背中に黄色いまだら模様があるので、メスですね。オスは黒っぽい一色で、メスにはこの模様があるんです。
秋も深まると、虫たちの姿はだんだん少なくなっていきます。夏にはあれほどにぎやかだった園庭も、今は少し静か……。それでもダンゴムシは健在です💪 落ち葉の下や植木鉢の陰で、今日も一生懸命生きています。
子どもの「見て〜」は、一日に何度も聞こえてきます。葉っぱのこともあれば、石ころや小さな虫のこともあります。大人はつい「すごいね」と返して、次のことに気を取られてしまいがちです。けれど、差し出された手をよく見ると、そこには、その日いちばんの宝物が載っています。
花は手のひらに、ダンゴムシは手の指に。秋は小さな手の上で笑っていました🍂



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